シニア世代の合言葉【フレイル予防】への第一歩
―簡単な運動で活発な毎日を― 第一回
お家で楽々! 簡単な運動でフレイル予防!
- 監修:
- 札幌医科大学 医学部 消化器内科学講座 教授 仲瀬 裕志 先生
- 監修:
- 札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部 理学療法士 河合 誠 先生
シニア世代において注目されている「フレイル」とは、加齢により身体機能や生理機能が衰えた状態で、介護が必要な状態の前段階と位置付けられています。健康で活発な毎日を送るために、フレイルの早期発見および予防に向けた取り組みが大切です。
フレイルについて知り、毎日できる簡単な運動を行うことで、フレイル予防への第一歩を踏み出しましょう。
― 第一回 ―
「歩く」を支えるおしり周りの
エクササイズ
おしりの筋肉は歩行時に体重を受け止め、動きを安定させる役割を担っています。週3回行いたいエクササイズです。
エクササイズ動画一覧
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第一回
「歩く」を支えるおしり周りのエクササイズおしりの筋肉は歩行時に体重を受け止め、動きを安定させる役割を担っています。週3回行いたいエクササイズです。
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第二回
「きれいな姿勢」を目指して
上半身のエクササイズ姿勢が悪くなると呼吸がしにくくなったり、腰痛や嚥下障害のリスクも高まります。毎日行いたいエクササイズです。
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第三回
「転倒予防」のために下半身のエクササイズたった一度の転倒でも、骨折による入院や療養生活がフレイルに繋がることもあります。週3回行いたいエクササイズです。
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第四回
「腰痛予防」に腰回りと腹筋のエクササイズ身体を支える腹筋が弱くなると、腰痛につながる恐れがあります。週3回行いたいエクササイズです。
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第五回
「ふらつき・転倒予防」に
バランス向上エクササイズシニア世代では立ち上がりや歩行の際にふらつき、転倒するケースが多くあります。週3回行いたいエクササイズです。
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第六回
「からだをほぐしてリラックス」
ヨガの動きでストレッチ寝る前、朝起きた時に、簡単なストレッチはいかがですか? ヨガを取り入れた動きでゆっくり身体を伸ばしていきましょう。毎日行いたいエクササイズです。
フレイルってなんですか?
フレイルとは、加齢や持病によって身体の機能が衰えた状態を指し、いわば介護を必要とする前段階と考えられています1)。フレイルには下の表のように、3つの要素があり、これらの要素は互いにかかわりあい、フレイルを進行させると考えられています。つまり、フレイルになってしまうと、身体のみならず心理面にも影響を与え、閉じこもりがちになる場合も少なくありません。また、最近は心臓病や糖尿病などの慢性疾患も、血管の老化や筋肉量の減少に影響することからフレイルの原因として注目されています。
- 身体的フレイル
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- サルコペニア(全身の筋肉量が低下した状態)
- ロコモティブシンドローム(骨折や関節の病気などで歩行などの移動能力が低下した状態
- 精神・心理的
フレイル -
- 認知機能の低下
- うつ状態
- 社会的フレイル
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- 閉じこもり
- 経済的困窮
フレイルは、これまで虚弱と訳されることも多かったのですが、このように身体と心と社会参加などを総合的に考える必要があり、虚弱だけではニュアンスが十分に伝わらないことから、フレイルという呼び方が一般的になってきました。 フレイルにおいて重要なことは、適切な介入によって予防や回復が可能となる点です。つまり、適切な食事や運動などにより自立した生活を取り戻せる可能性があり、一方で、放置すれば(そのままにすると)フレイルが進行し、介護が必要な状態となります。このため、日常生活において十分気を付けることが望まれています。
フレイルの基準は?
フレイルかどうかを判断する基準にはさまざまなものがありますが、米国のFried医師が提唱した基準が国際的によく用いられています。さらに、Fried医師らの基準をもとに日本人高齢者向けに作成した日本版CHS基準(J-CHS)があります2)。つぎの表の全5項目中、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目該当するとフレイルの前段階であるプレフレイルと判定されます。
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体重減少
→ 意図しない半年間で2kg以上の減少 -
疲れやすい
→ ここ2週間わけもなく疲れたような感じがする -
歩行速度の低下
→ 通常の歩く速度が1.0m/秒未満 -
握力の低下
→ 握力測定(男性<26kg,女性<18 kg) -
身体活動量(日常生活で体を動かす量)の低下
Satake, S. et al.:Geriatr Gerontol Int. 2020;20(10):992-993.(一部改変)
フレイルと炎症性腸疾患の関係は?
近年、潰瘍性大腸炎とクローン病の炎症性腸疾患(IBD)において、高齢の患者さんが増加しており、IBDとフレイルの関係が注目されています。アメリカの研究によると3)、90歳以上のIBD患者さんの4人に1人がフレイルであり、その原因として最も多いのはタンパク質とカロリーが足りない栄養失調でした。そして、IBD患者さんがフレイルになると、死亡率が上昇してしまうことも判明しました。 このように高齢者、特に高齢IBD患者さんにとって、フレイル予防は大変重要となります。そのために、次のような対策が望まれます。
このように高齢者、特に高齢IBD患者さんにとって、フレイル予防は大変重要となります。そのために、次のような対策が望まれます。
このように高齢者、特に高齢IBD患者さんにとって、フレイル予防は大変重要となります。そのために、下の表などの対策が望まれます。
フレイルの対策
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IBDの悪化を
しっかりと抑える -
運動による筋力低下の
予防 -
タンパク質を含んだ
バランスのよい食事 -
積極的な社会活動への
参加
など
ここでは【運動による筋力低下の予防】のために、家の中で体中のいろいろな筋肉を動かすことができるエクササイズ動画を6つ紹介します。定期的な運動は、フレイル予防にとても役立ちますので、動画を見ながら、ぜひ一緒にエクササイズを行いましょう。
札幌医科大学 医学部 消化器内科学講座
教授 仲瀬 裕志 先生
1) 荒井 秀典:日本老年医学会雑誌. 2014;51(6):497-501.
2) Satake, S. et al.:Geriatr Gerontol Int. 2020;20(10):992-993.
3) Kochar, B. et al.:Aliment Pharmacol Ther. 2020;52(2):311-318.